いる様子がない。否、大変熱心にフイルムに見入つている。久や[#「や」に傍点]の様子をちらと見ると、これは西洋映画の筋がよくのみこめないと見えて、余りこわがつていないようだけれども、また余り面白がつてもいないらしい。
ともかく、ここに長くいるべきでないと思つたから、私はひろ子に、
「何だか、こんな時にこんな写真を見るのはいい気持がしませんから、芝居にでもいつて見ませんか」
と切り出した。
ひろ子は、もつと見ていたかつたらしいが、初江がしきりに出たがるので、仕方がないという形でコンパクトを出して顔をなおしながら、
「じや、東劇へでも行つて見ましようよ」
とやつと同意した。
またもや御意のかわらぬうち、と私は早速三人を促して廊下に出て、電話で東劇の切符を問い合わせると幸にもならんで四枚とることが出来たのでいそいで、邦楽座から、東劇までかけつけた。
華かな劇場に足をふみ入れた途端、私は、今まで予期しなかつた危険がせまつていることに気がついた。
これは藤枝も考えていなかつたことだつた。
しかしあとから思えば当然考えるべかりしことである。ここに思い至らなかつたのは、全く藤枝にも似合
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