ューグランドについてからも別にあやしい人間は見当らなかつた。
食堂で、久し振りでうまいコールドラブスターをつつきながら私はすつかり安心して藤枝の先見に感服してしまつた。
食事はひるちよつとすぎ終つた。ではこれから邦楽座でも見ようというのでわれわれは再び車を東京に向けた。
邦楽座の二階に席をとつた時はちようど、パラマウント・ニュースが映写されはじめた時で、極く工合がよかつた。映写の間の休み時間には誰にも知つた人に会わず、われわれは心ゆくまで映画を鑑賞することが出来た。
しかし最後の、呼物の写真がうつりはじめた時、私はこれはとんだ事になつたと感じた。
その映画は、有名な探偵小説を映画化したもので、アメリカの映画スタディオで殺人が行われるという筋、はじめの出からして物凄いものであつた。
折角外出して陽気になつたばかりの所へ、こんな殺人映画を見せられては、令嬢達も堪まるまい。私はプログラムをあらかじめ調べないで、とび込んだ事を心ひそかに後悔しはじめたが、はたして初江が写真の途中で、
「私、何だか気味が悪いわ、もう出ない?」
と云い出した。
しかしひろ子の方は、いつこうこわがつて
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