と思いますから」
「なに、何でもありませんよ。今日も彼が来るといいんですが、生憎身体を悪くしてしまいましてね。それでお役には立ちませんが、私にお嬢さん方のお相手をしろと命令したわけです」
「ああ、今うけたまわつたんですが、うちの娘達をどこかへお連れ下さるそうで、喜んでおります。実さいこんな事がおこつて娘たちに気の毒なんですが、一つどこか気のはれるところにでもつれて行つてやつて下さいませんか」
主人の気分がすつかりこつちと合つて来たので、私は心ひそかに喜んだ。
まもなく、二人の令嬢は外出の用意ができたと見えて、また応接間にあらわれた。さすがに、金のかかつた服装だけれども、折が折とて、余り人目に立たぬみなりであつた。
私には、実はひろ子、初江、久や[#「や」に傍点]の三人を私一人で連れ出すことは相当心配なのである。しかし当人連は一向にそんな不安な様子はない。久し振りで、ほがらかな[#「ほがらかな」は底本では「ほがらなかな」]外気にあたれるつもりですつかりよろこんでいる。
どこへ行くか、という事で、暫く話し合つたが、結局、とりあえずホテルへでも行つて食事をすませ、それから映画か芝居で
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