論藤枝自身が電話に出れば、警察でも語つたのだろうが母が代つて会話をしたために云わなかつたらしい。警察の用心のほどが思いやられる。
だから、伊達がとめられた一件と、駿三の機嫌がなおつて来た事とは、この日私が藤枝に伝えることのできたニュースであつた。
四月二十二日は斯くしてあけ、斯くしてくれた。
翌二十三日の朝、わりに早く、私は藤枝に電話でよばれていそいでかけつけた。
私が藤枝のところに着いた時は、丁度、かかりつけの医師が来ていて、何か薬をしきりと彼の咽頭部に塗つてやつているところだつた。
「先生に、しやべるのと煙草を喫うのはいかんて、今叱られたばかりなんだがね。どうしても君に云わなきやならぬ事があるので、君をよんだんだよ」
私が医師に挨拶してしまうと、半ば弁解がましく藤枝が云つた。
「しかし君、どうなんだい。身体は。……如何です。昨日よりはいくらかよろしいでしようか」
私は医師の方に向いた。
「余り変りませんな。熱もまだあるし、まあ四、五日は静養される必要がありましよう」
医師は無論藤枝の職業を知つているので、何か私と秘密の話があると推察したと見え、一応、手当を説明して直ぐ
前へ
次へ
全566ページ中286ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
浜尾 四郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング