枝は、やむをえずふとテーブルを見たが、そこに来客接待用の金口のエジプト煙草がおいてあつたので、無造作にそのシガレットをつかみ出すと、ライターを出してすぐ火を点じた。
 私は敢えて運が悪い[#「運が悪い」に傍点]という。もしこの時彼かあるいは、私のケースの中に、五、六本のエーアシップか、ヴァージニヤ葉のシガレットがはいつていたとすれば、此の物語は別の方向に進行したかも知れないからである。

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 と云つたからと云つて、よく探偵小説にあるように、此の煙草の中に毒薬がしかけてあつて、我が藤枝探偵が急にそこにぶつたおれたというようなわけなのではない。
 彼は平素エジプト煙草は嫌いで少しもすわないのだが、この時は「無きにまさる」と思つたのか、M・C・Cの紫煙をさかんに吹きはじめたのだつた。
 彼は更に何かさだ子にききたそうだつたがこの時、ドアが開いてひろ子がまた戻つて来た。
「ほんとに困つちまうんでございますよ。とうとう清や[#「清や」に傍点]の叔父というのが来て清や[#「清や」に傍点]をつれて行つてしまいましたの」
「あら!」
 驚いてさだ子が口を出した。
「さだ[#「さだ」に傍
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