あるからそんなに恐怖したと思われても仕方があるまい」
「でも、私があわてて逃げたのは今云つた通りで外に理由はないのです」
「君ちよつとききたいが」
藤枝が口を出した。
「さつき君は、やす子と問答をしていた際、やす子が『あれ、誰かこつちに来る』と叫んだので母屋の方を見ると、誰かが出て来たと云つたね」
「はあ」
「その時出て来た人は男だつたか女だつたか。大人だつたか子供だつたかおぼえているかね」
早川は暫く考えていたが、やつと口を開いて
「何分私は遠くから人の出て来るらしいのを見ると、すぐこりやいかんと思つて後をも向かず逃げ出してしまつたのですから、よくおぼえませんが」
と答えた。
「しかし、これは大切な所なのだ、よく思い出して見給え」
だが、早川は何とも答えなかつた。
そこへ口を出したのが警部だつた。
「お前が云えなければわしが云つてあげよう、その時出て来たのは十四、五の少年だつた筈だ」
9
「十四、五の子供が?……」
早川が意外な、というような顔できき返した。
「そうさ。十四、五の少年だ。つまり秋川家の息子なんだよ。そこでお前は、やす子を殺して夢中になつてい
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