端、急にまつくらな所に来てしまつたので充分あたりが見えませんでした。しかし、やす子のいる所はすぐ判りました。それは彼女が、
『あら、あなた来ちやつたの?』
 と小声でいいながら私のそばに来たからであります。いいえ、彼女は私の姿を見てすぐに逃げようとしたのではありません。彼女の方から寄つて来たのです。それは無論、逃れぬ所と覚悟していたのかも知れませんが。
「私はいきなり彼女の腕を掴んで自分の思つている所をしやべりはじめました。するとやす子は手早くそれを遮つて、決して情夫などと一緒になつて私を裏切つたのではないということを語りましたが更に、
『実は十七日の夜私が取りに行つた薬が大変な劇薬に変つていて奥様がおなくなりになつたの、それで私は途中でもしあなたに会つたと云つて疑いがあなたにかかると悪いから今まで検事だの、刑事だの探偵にずいぶん責められたけれども、一言もあなたに会つたことは云わなかつたのよ。それでどうも私が疑われているのじやないか、と思うの。だけれどたつた一人大変親切な方があつて私をかばつていて下さるので今までは無事なんだけれど……。ともかくそんな有様なんだから今ここにぐずぐずしてい
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