「私は早川辰吉と申し本年二十三才になります。最近牛込区○町○丁目の八重山館という下宿にまいりましたが別だん職業というものはありませぬ。私の父母は相当の商人で、質屋をしておりました。私の少年時代には父母は健在で大阪におり、私も同地の小学校に通つていたのです。小学校を出る頃父を失いました。しかし、資産は相当ありましたので私は別段困ることもなく、つづいて同地の某中学校に入学致しました。中学の三年の頃母を失つてしまつたので、大阪市外に当時住んでいた私の叔父の所に預けられ、そこから学校に通つておりました。
それからずつと叔父の所で通学して居りましたが、中学を出る頃になつて、私ははじめて、父の財産の全部を叔父に横領[#「横領」は底本では「横母領」]されていることに気がつきました。無論私は叔父だの叔母[#「叔母」は底本では「叔」]だのとさんざん争いましたけれども、とうとうごまかされてしまつたのです。叔父は私の後見人である地位を利用して実に非道な事をやつてしまつたのです。そうです、叔父があんな奴でなかつたなら私も今こんな浅ましい姿にはなつていなかつた筈なのです」
彼はこう云つたが余程残念だつたと見
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