いて近寄つて見るとまさしく彼が云つた通り佐田やす子がそこに仰向きに仆れている。
藤枝は死体に手をあてていたが
「いかん、これももう駄目だ。完全に死んでいるよ」
と私をかえりみた。
佐田やす子の死体は一見かなり乱れたていをしていた。抵抗したらしいあとも見える。
着物は、今しがたわれわれが見た通りの物だが襟がはだけて乳房の辺まで出ており、両肩近くまでひろげられている。右手を地上に伸ばし、左手を胸の上においているが、断末魔に何か掴もうとしたらしく、両方とも堅く拳を握つている。頭髪は相当乱れてはいるが、引きまわされたようにはなつていなかつた。
「こりや君、咽喉をしめられたんだよ。ここを見給え。ほら、色が変つているだろう」
電燈の光で仔細に死体を見つめていた藤枝が私にそう云つた。成程、咽喉のまわりがひどく変色している。何かでぎゆつと引き締められたに相違ない。
この時、
「おい、何か起つたのかい」
という林田の重々しい声が聞えた。
見ると、懐中電燈を照らしながら林田がむこうから近づいて来る。
「女中だよ、さつきの女中がやられたんだよ」
藤枝がやや興奮して答えた。
「佐田やす子?
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