判らない。
庭に面した窓と右手の洋画のかかつている壁と直角に交わつている隅に、立派なヴィクトローラ(蓄音機)が一台おいてある。
[#客間の配置図(fig1799_01.png)入る]
何故私がいそがしい今、こんな煩わしい描写をしたか。読者は充分にこのピヤノの部屋の有様を記憶しておいて頂きたい。後におこつた惨劇を解する上に甚だ大切なことだから。
さて、藤枝のやす子に対する質問は、もし今までやす子が嘘を云つていたとすれば、一言にしていえば、まつたく不成功であつた。
彼はやはり高橋警部、林田英三を一歩も追いこすわけにはいかなかつた。
とうとうあきらめたものか藤枝は林田に向つて、
「僕はもうこの位でいいと思うんだが、もう君はいいかね」
と云い出した。
「いや、僕もいい。今までやつたんだがやはりよく判らんよ」
「じや、どうも御苦労、もう部屋に戻つてもいいぜ」
藤枝にこう云われてやす子はやつと安心したやうに椅子をはなれて入口のドアの方へとゆきかけた。
藤枝と林田はお互いに不成功を慰めあうつもりか、苦笑しつつ顔を見合わせたが藤枝は左手でシガレットケースを出して林田にすすめながら、自分
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