りに行くと階段の右側に大きな戸がある。藤枝はノックをしながら、
「林田君、藤枝だ。はいつてもいいかね」
というと中から林田の声で
「うん、いいとも。どうぞ」
という声がきこえた。
それに応じて藤枝と私とは部屋にはいつた。
途端に目にうつつたのは、こちら向きに腰かけている佐田やす子の顔だつたが、相当烈しく林田に問いつめられていたと見え、まつさおになつて目のふちには涙のあとが充分に見える。手にもハンケチが惨《いた》ましくふるえているのがすぐ判る。
「実に剛情だ。こんな女ははじめてだよ藤枝君、一つ君の腕で充分調べて見給え。何なら僕は遠慮しようか」
「いやいや、君の前できいて見よう」
こういつて藤枝は佐田やす子に対してわりにおだやかに質問をはじめた。
「どうも君のいう事が判らないんだがね。度々いう通り、あの日まつすぐに西郷へ行つてまつすぐに帰つたのかね」
「はい……只今全部林田先生に申し上げた通りでございます」
「林田先生に云つた通りとは、このあいだ云つた通り少しもまちがいはないと云うのかい」
「はい……」
彼女の答はこれで終始していた。
私と林田とを傍において藤枝はしきりといろ
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