もこんな事になりはしないかとは、ひそかに考えていたのでございます。きのうも申し上げました通り、脅迫状がまいこんでまいり、父はすべての会社から手をひいてしまつたのですが、その後ますます神経衰弱がひどくなるばかりなのでございます。今年になりましてからは、例の手紙が前より頻繁にまいりますの。従つて父の様子はますます変になるばかりでございました。ところが、今度は、家の中で妙なことが起りはじめたのでございます」
「ほほう」
藤枝は急に身を乗り出した。
「これはどうもはじめがいつ頃かはつきり致しませぬけれども、今年になりましてから父と母との仲がひどく悪くなつて来たのでございます。いつも余り泣いたりせぬ母が、どうもこのごろヒステリーのようになつてまいりまして、その度が段々はげしくなつて来たのでございます。私もはじめのうちは、どういうわけで父母が争いを致すようになつたのだか判りませんでしたが、ある時、二人の争いをそつときいておりますと、たしかにさだ子と伊達さんの結婚問題が中心なのでございます」
「つまり、あなたがさつき検事に云われたように、財産の問題なのですな」
「はい、だんだんきいておりますと、た
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