子は母にいわなかつたろうと思うといつたことをおぼえているだろうね。父が誰にもいうなといつたからいわなかつたといえばそれまでだがね、ちよつとふしぎじやないかな」
「しかし姉ひろ子には、はつきり話したらしいね」
「それはあの場合、どうしても話さなければならなかつた状況にあるからさ。それに或いは姉には話しても母にはいわぬという理由があつたかも知れない。これはしかし僕には大分判つて来たよ」
「そうかな」
「つまり秋川一家では昨年の夏から年の末まで主人がおどかされ通しで、それを知つていたのはひろ子一人、そうして、そのまま今年にもち越して来たという事になる。ところで昨年の末から昨日までのようすは生憎、君も知つている通り、ひろ子からきく事が出来なかつたが、察する所、段々その脅迫の度合がひどくなつて来たと考えればいいのだろう。
つまり、ひろ子がたまりかねて僕の処にとび込んで来た、と見ればいいわけさ。
以上が惨劇までの秋川一家のようすだが君は一体これをどう思うね」
「そうだね。まあ常識で考えて判ることは主人の過去に何か恐ろしい秘密があると思うよりほかに仕方があるまい」
「そうさ。秘密というより或いは
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