誰にもこの話をしなかつただろうかね」
「そう思われるね。ただたつた一人、林田英三君にはいつかしやべつたかも知れぬよ。彼中々信用を博しているから。しかし彼に話をしたにせよ、わりに近くのことだと思うね。さてそこで又々注意すべきは、昨年の十月になつてから次女さだ子の所にもへんな手紙が来たという事実だよ。

      6

「君は、さだ子がその赤三角の手紙を父にもつて行つた時の父の慌て方をひろ子からきいたろう。そこで又一つ考えなければならぬことがおこつた。すなわち、われわれは不幸にして父の所に来た脅迫状の内容を知ることができないが、一体その脅迫状は、駿三のいのちをおびやかしているのか、又その家族にも危害を加えると云つているのかという問題だ。駿三のあわて方から考えると、たしかに後者だと見なければならない。更にここで今一つ君に注意を喚起したいのはこれらの手紙は全部郵送されて来たということだよ。
 次にもう一つ不思議なことがおこつている。
 それははじめて気味の悪い手紙を受け取つた当人のさだ子がこれを姉には云つたけれど、母には云わなかつたという事実だ。君はひろ子が、この点について、確信を以て、さだ
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