殺人鬼
浜尾四郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)桜花《さくら》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)アンチピリンを|〇・《ポイント》四だけ
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)事実を事実[#「事実」は底本では「実事」]として
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美しき依頼人
1
二、三日前の大風で、さしも満開を誇つた諸所の桜花《さくら》も、惨《いた》ましく散りつくしてしまつたろうと思われる四月なかばごろのある午後、私は勤先の雑誌社を要領よく早く切り上げて、銀座をブラブラと歩いていた。
どこかに寄つてコーヒーでも一杯のんで行こうか、いや一人じやつまらない、誰か話し相手はないか、とこんな事を考えながら尾張町から新橋の方に歩いて行くと、ある角で突然せいのひどく高い痩せた男にぶつかつてしまつた。
「馬鹿め、気をつけろい」
と云つてやろうと思つてふとその人をよく見ると、知り合いの藤枝真太郎という男である。
「おや、藤枝か。どうしたい」
「うん君だつたのか。……今日は何か用で?」
「ナーニ、あいかわらず意味なく銀ブラさ。君
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