できくとして、一体今日の事件の説明はどうなるのです」
 警部がいそいで藤枝をよびとめた。
「さつきさだ子からおききの通り。あの通りですよ」
「と云うのは」
「ああ成程。充分判つておられぬのですな、実は昨日林田を訪問したのです。そしてある方法を用いて林田に自己の策戦が全く誤つていることを信じさせた。同時に僕が奴をすでに心の中で捕えていることをはつきりしてやつたんですよ。それで彼は自殺する決心をしたんだ。その道づれにさだ子をえらぼうとしたのです。小川君失礼しようじやないか」
 彼はこういうと、私を手で招きながらさつさと室を出た。検事も警部もいささか呆気に取られた形で、われわれの方を見ていたが、藤枝は一向かまわず、そのまま外に出てしまつた。
 タクシーを捕えると、彼は、上機嫌で銀座へといそがせた。
 四月十七日の事件以来、私ははじめてはればれとした気もちで宵の銀座を歩いた。
「めし時に、演説しちやつて大分腹がへつたよ。どこかでめしを食おう」
 藤枝は、いつも彼の行くある洋食屋へ私を案内した。ボーイばかりで女ッ気のない店で客もあまりいない。
 藤枝と私はほんとうにくつろいだ気もちでコンソメのスプーンを取つた。

   終局

      1

「ねえ藤枝。いよいよ事件は大団円だが、僕にはまだ大分判らない点がある。第一君は一体如何して林田が犯人であるとつきとめたか、これを説明していない。それから林田が犯人と判つているのに何故君はだまつていたか、自殺をする事を知りながら何故ほつておいたか。何故警察に訴えなかつたか、これらがききたいね」
「あははは。大分聞きたいんだね。しかし君の質問は多くて一時には答え切れない。まず第一の質問に答えよう。では僕がどうして犯人をつきとめたか、これは今警察でしやべつたばかりだが、僕は初江が殺されるまでははつきりあてがつかなかつたんだ。第一回の慘劇の後では全く五里霧中で誰が犯人だかさつぱり判らなかつた。実は林田の手にウカと乗つて家族の中に怪しい者があるとにらんだのだよ。ただたつた一つ確信したことは、あの劇薬が秋川家に来るまでにすりかえられていたということだ。この考え方はさつき云つた理由からだが、さし当り佐田やす[#「やす」に傍点]がおかしい。しかしやす[#「やす」に傍点]は君も知つている通り、あくまでも否認した。やす[#「やす」に傍点]が自身ですりかえ
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