す」
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「成程、無理はないな」
と藤枝がつぶやいた。
「ところがそれならばいつもの通り裏門からはいつて裏口から上り、二階のさだ子の部屋に行けばいいわけなのです。何故彼は庭へまわつたか、しかも雨の中をね。私はここが怪しいとにらんだから早速この点を突つこみました。伊達の弁解によれば、左様な次第で行つたのだから、なるべくさだ子以外の者には会いたくない。殊にひろ子には顔を合わせたくない。二階に行けばきつとひろ子に偶然会うことになるから、なるべくならば庭からさだ子の部屋に声をかけたかつたとこういうのです。これからが肝心のところで面白いのですよ。伊達の供述に従うと、彼は裏門から庭に廻つた。そうしてさだ子の部屋のすぐ下に来て上を見たが、成程、すぐ下からは窓は見えない。それで、うしろむきに七、八歩あるいた、とこういうのです。その時、ふと見ると、ピヤノの部屋に人かげがする、ことによるとさだ子ではないか。さだ子なら極く都合がいい、とこう思つて彼はあの部屋に近づいたのです。部屋の中が暗いので、彼は向つて右の窓の所に行き、窓に手をかけてひよいと顔を出すと、その途端に中で、ウンという妙な声がすると共に、駿三が仰向きに仆れるのが見えた。それで何事か判らないが、おどろいて、そのまま逃走した、とまあこういうのです」
警部は語り続けて、プカリと朝日の煙を吐いた。
私は藤枝か林田が何かいうかと思つたが二人とも一言も発しない。
「ところがこの供述は無論全部がほんとうではない。あの窓の所の足跡の工合から見ても、それから被害者が書類をもつていなかつた点からいつても、伊達はあの室の中に侵入していなければならない筈です。この点をどうしても未だ自白しませんけれども、ナニもう直ぐですよ、あそこまで行つていれば。それに、あの倒れていた椅子の足や腕から現場に残されている指紋を悉くとらせてありますから、彼が部屋に侵入した事実は判るでしよう。それから伊達の家を捜索させていますから、書類というのも間もなく探せることと思います。あなた方には大変お手数でした。もういつでもお引取り下さつてよろしい。二人の令嬢はもう暫く調べて一応帰すつもりです。もつともさだ子の方は、伊達との関係上、多少おくれるかも知れませんが。雇人は関係なしと認めたので全部帰してやりました。笹田という老人ももう帰つている筈です」
帰つてい
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