づいて、至極陰気な暗い日だつた。
メーデーの行列を閉口させない程度の雨が一日降りつづいて、四時半頃には、もうあたりはかなり暗くなつていた。
この日の天候は、この日行われた惨劇に大へん関係があるのだから、読者ははつきりおぼえていて頂きたい。
秋川邸に着いたのは四時半すぎだつた。
笹田執事が取りついで、われわれは応接間に通された。
木沢氏がちようど来ている所だつたので、藤枝はまず木沢氏に面会を求めた。
「藤枝さん、御旅行だつたそうで、小川さんからききました」
「え、急用で出かけました。それで今帰つたのですが、大変切迫した用で、ここの主人に是非会いたいのですが如何でしよう」
「さあ、御主人はずつと病気ですが」
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「それは小川から聞いています。しかし大病という程ではないのでしよう」
「この前と同じ神経の興奮です」
「どうでしよう。会えませんかしら」
「お話の工合によります。つまり神経をたかぶらせるような話はこの際絶対にさけて頂きたいと思います。これは医師の立場として、はつきり申し上げておきます」
彼の言葉には科学を信奉するものの冒しがたき調子があつた。
一方藤枝の態度は、しかし極度に緊張していた。
「木沢さん、よく判りました。しかし私の云うこともよくきいて頂きたい。私は切迫した事件の為に非常に忙しい旅行をして来ました。そしてその結果を一刻も早く――そうです、一刻も早くここの主人に告げる義務を感じるのです。これは私の職業的良心が命ずるのです。ちようどあなたが医師としての立場から云つておられるようにね。木沢さん、あなたは、このうちの不思議な事件を御承知でしよう。何者とも判らぬ犯人の為に、この一家は一人一人死んで行くようになつてしまつているのです。そうして、あとに残つている三人の生命をわれわれは全力をつくして保護しなければならない。これは私のつとめです。不幸にして、われわれの努力は空しかつた。そうして危険は一刻一刻と迫つている。私はこの室の空気の中にそれを感じます。私がこの家の主人に会うことはこの危険を少しでも早く取り去り得ると信ずるのです。云いかえれば、今私が主人に会わずに行つては、今日にも誰かがまたやられるかも知れません。木沢さん、あなたの立場もよく判ります。しかし危険の迫つていることはたしかです。しかも人の生命は絶対です。どうでしよう、死ぬよ
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