来て、冬がすぎては、いつのまにか
人生の絵巻はむなしくとじてしまった。
酒をのみ、悲しむな。悲しみは心の毒、
それを解く薬は酒と、古人も説いた。
129[#「129」は縦中横]
お前の名がこの世から消えないうちに
酒をのめ、酒が胸に入れば悲しみは去る。
女神の鬢《びん》の束また束を解きほぐせ、
お前の身が節々《ふしぶし》解けて散らないうちに。
(130)[#「(130)」は縦中横]
さあ、一緒にあすの日の悲しみを忘れよう、
ただ一瞬《ひととき》のこの人生をとらえよう。
あしたこの古びた修道院を出て行ったら、
七千年前の旅人と道伴《みちづ》れになろう。
(131)[#「(131)」は縦中横]
胸をたたけ、ああ、よるべない大空の下、
酒をのめ、ああ、はかない世の中。
土から生れて土に入るのか、いっそのこと、
土の上でなくて中にあるものと思おう。
132[#「132」は縦中横]
心はたぎる、早くこの手に酒をくれ!
命、いのち、銀露のようにたばしる!
とらえないと青春の火も水となる。
さあ、早く物にくらんだ目をさませ!
133[#「133」は縦中横]
酒をのめ、それこそ永遠の生命だ、
また青春の唯一《ゆいつ》の効果《しるし》だ。
花と酒、君も浮かれる春の季節に、
たのしめ一瞬《ひととき》を、それこそ真の人生だ!
134[#「134」は縦中横]
酒をのめ、マ※[#小書き片仮名ハ、1−6−83]ムード*の栄華はこれ。
琴をきけ、ダヴィデ*の歌のしらべはこれ。
さきのこと、過ぎたことは、みな忘れよう
今さえたのしければよい――人生の目的はそれ。
135[#「135」は縦中横]
あしたのことは誰にだってわからない、
あしたのことを考えるのは憂鬱《ゆううつ》なだけ。
気がたしかならこの一瞬《ひととき》を無駄《むだ》にするな、
二度とかえらぬ命、だがもうのこりは少い。
(136)[#「(136)」は縦中横]
時のめぐりも酒や酒姫《サーキイ》がなくては無だ、
イラク*の笛も節《ふし》がなくては無だ。
つくずく世のありさまをながめると、
生れた得《とく》はたのしみだけ、そのほかは無だ!
137[#「137」は縦中横]
いつまで有る無しのわずらいになやんでおれよう?
短い命をたのしむに何をためらう?
酒盃に酒をつげ、この
前へ
次へ
全22ページ中18ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ハイヤーム オマル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング