れる日、
その土でもし壺を焼いたら、さっそく
酒をついでよ、息を吹きかえすに。

  (82)[#「(82)」は縦中横]

命の幹が根を掘られて、
死の足もとにうなじをたれよう日、
身の土だけは必ず酒の器に焼いてくれ、
しばらくは息をつこう、酒の香に。

  (83)[#「(83)」は縦中横]

愛《いと》しい友よ、いつかまた相会うことがあってくれ、
酌《く》み交《か》わす酒にはおれを偲《しの》んでくれ。
おれのいた座にもし盃《さかずき》がめぐって来たら、
地に傾けてその酒をおれに注《そそ》いでくれ。

  (84)[#「(84)」は縦中横]

あのしかつめらしい分別《ふんべつ》のとりことなった
人たちは、あるなしの嘆きの中にむなしく去った。
気をつけて早く、はやく葡萄の古酒を酌《く》め、
愚か者らはまだ熟《う》れぬまに房を摘まれた。

  (85)[#「(85)」は縦中横]

法官《ムフテイ》よ、マギイの酒にこれほど酔っても
おれの心はなおたしかだよ、君よりも。
君は人の血、おれは葡萄の血汐《ちしお》を吸う、
吸血の罪はどちらか、裁けよ。

  (86)[#「(86)」は縦中横]

或る淫《たわ》れ女《め》に教長《シャイク》*の言葉――気でも触れたか、
 いつもそう違った人となぜ交わるか?
答えに――教長《シャイク》よ、わたしはお言葉のとおりでも、
 あなたの口と行《おこな》いは同じでしょうか?

  (87)[#「(87)」は縦中横]

恋する者と酒のみは地獄に行くと言う、
根も葉もない囈言《たわごと》にしかすぎぬ。
恋する者や酒のみが地獄に落ちたら、
天国は人影もなくさびれよう!

  88[#「88」は縦中横]

天国にはそんなに美しい天女がいるのか?
酒の泉や蜜《みつ》の池があふれてるというのか?
この世の恋と美酒《うまざけ》を選んだわれらに、
天国もやっぱりそんなものにすぎないのか?

  (89)[#「(89)」は縦中横]

天女のいるコーサル河*のほとりには、
蜜、香乳と、酒があふれているそうな。
だが、おれは今ある酒の一杯を手に選ぶ、
現物はよろずの約にまさるから。

  (90)[#「(90)」は縦中横]

エデンの園《その》が天女の顔でたのしいなら、
おれの心は葡萄の液でたのしいのだ。
現物をとれ、あの世の約束に手を出すな、
遠くきく太鼓《たい
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