平野義太郎宛書簡
一九三二年九月八日
野呂栄太郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)仕《つかまつ》り

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)拝見|仕《つかまつ》り

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から3字上げ]
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御手紙拝見|仕《つかまつ》りました。いろいろと御尽力を感謝申し上げます。編集会議の模様についてはその都度井汲君から伺っています。
小倉氏の自然科学史に岡氏が協力する点については岡氏の政治的立場(というよりは氏の周囲の政治的傾向)から判断して、私は最初から危虞《きぐ》の念をもっており、羽仁氏や貴下にも多分その意をもらしたように記憶しております。で、もし、自然科学史が殆んど岡氏によって書かれたとすれば、御手紙のようなことは不可能だと思います。そのまま二、三字句の修正位で発表することは恐らく適当でないと存じます。全面書き改めてもらうか、編集者の方で徹底的に修正加筆するか(もし可能なら)、いずれにするにしても一度原稿を拝見したいと思います。
「唯物論研究所」表面上の主催者達の政治的傾向については今さら論議するまでもありませんが、その背後についても幾多警戒すべき傾向が想像されますから御入会等のことのないことを希望します。自然科学史の原稿井汲氏に御渡し下されたく、なお、御都合できましたら次の日曜か月曜頃御|来駕《らいが》を煩わし得れば幸に存じます。
まずはとりあえず御返事まで。
   九月八日
[#地から3字上げ]栄太郎
  平野様
     侍史



底本:「野呂栄太郎全集 下」新日本出版社
   1994(平成6)年12月5日初版
※作品名は、便宜を考慮して、入力時に新たに付したものです。
入力:山田剛
校正:土屋隆
2005年3月19日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
終わり
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