『日本資本主義発達史講座』趣意書
野呂栄太郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)蔽《おお》わんとして

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から2字上げ]――一九三二年六月――
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 世界経済恐慌の発展は全資本主義体制の、従ってまた日本資本主義制度の根底を揺り動かしている。資本主義の一般的危機の先鋭化、その上に進行しつつある恐慌の破局的深刻化、国際的諸対立の脅威的緊張、そして階級対立闘争の不可両立的激化――すべてこれらの、もはや蔽《おお》わんとして蔽《おお》いがたき事態の急激なる悪化は、支配階級及びその代弁者どもをして今さらのように国難来を叫ばしむるにいたった。曰く、経済国難! 曰く、思想国難! 曰く、建国以来未曽有の国難!
 急迫せる情勢に転倒せる帝国主義者の脳裏には、恐らく戦争とファシズム以外の考えは浮かび得ないであろう。しかしながら、経済的発展の行詰まり、政治的支配の動揺、社会情勢の不安等々の解決は、かかる一連の事態の変化を必然にし、不可避にしたところの根本的矛盾を究《きわ》めることなしには、問題解決の糸口をつかむこ
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