史家たちの研究に任せ得る問題でもない。本講座は、今日この問題の真の解決のために協力し得るほとんど大部分の研究家の参加を得た。それは文字通り、約三十名の執筆者の共同労作である。各執筆者の研究は、それぞれの範囲内では各自の創意を十二分に発揮しながらも、あくまで全体の緊密なる構成部分を成している。
 本講座は、今日世に問い得る限りにおいて、日本資本主義の最も包括的な科学的研究であり、その本質的矛盾の最も根本的な分析である。しかも、われわれが当面せる諸問題の根本的解決のためには、本講座はわずかに解決の鍵を提供するにすぎない。われわれは、日本資本主義の危機からの革命的活路を身をもって切り開かんとする多数読者の積極的努力によって、始めてさらに完成せらるべきことを期待する。社会的矛盾の中に真理を求め資本主義社会の発展の法則を究明せんとする一般諸君の検討を待望しつつ、あえて本講座を世に問わんとする所以である。
[#地から2字上げ]――一九三二年六月――



底本:「野呂栄太郎全集 下」新日本出版社
   1994(平成6)年12月5日初版発行
入力:山田剛
校正:川向直樹
2004年2月18日作成

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