わしや知らぬ


[#1字下げ]絹の裳裾[#「絹の裳裾」は大見出し]

絹の裳裾《もすそ》は
  四辺《あたり》を照らす

裾にや照らされ
  照らされる。

畑照らすは
  天道《てんと》さまばかり

畑照らしに
  照らしやりに

今日も照らしやる
  畑の中にや

わしと天道さんと
  ふたりきり。


[#1字下げ]岡崎一口唄[#「岡崎一口唄」は大見出し]
[#ここから4字下げ]
(この一口唄は、三河国岡崎の老友岡田撫琴居士におくる。)
[#ここで字下げ終わり]

やんれ 岡崎の
娘さん

わしとゆかぬか
鎌もつて

あの山 蔭へ
草刈に

草を枕に
やつとさのさ

草がしをれる
やつとさのさ

茨がとめたら
どうなさる

おや、岡崎の
娘さん

そのときや茨と
やつとさのさ


[#1字下げ]大函小函[#「大函小函」は大見出し]
[#ここから4字下げ]
(大函小函は、北海道大雪山の南麓。峡流美で名高い層雲峡の上流。河鹿の名所である。)
[#ここで字下げ終わり]

大函《おほばこ》 小函の
河鹿《かじか》の子さへ

岩にやせかれる
瀬にや流される

浮世なりやこそ
あきら
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