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杉になりたや
御嶽《みたけ》の杉に
御嶽三柱
まもり杉に
   ――甲州御嶽にて――


[#1字下げ]山越え 山越え[#「山越え 山越え」は大見出し]

山越え 山越え
逢ひたさに

夜中のお星が
出るころに

山越え 山越え
逢ひに来る

夜明けにや 帰らにや
ならぬのに

逢瀬《あふせ》もほんとに
短いに

山越え 山越え
逢ひに来る


[#1字下げ]働け 働け[#「働け 働け」は大見出し]

働け 働け
せつせと働け

野良ぼ犬さへ
朝寝はしない

まして鶏ア
なほ早い

寝てて暮さば
先の世に見やれ

空の天道《てんと》さま
罰あてる

寝てて暮すは
お嬢さまばかり

寝ててお百姓ア
暮されぬ。


[#1字下げ]空の天道さま[#「空の天道さま」は大見出し]

誰もゐないから
  天道《てんと》さま見たら

ウンニヤ 魂消《たまげ》た
  天道さま言ふにや(ホホホノ ホイ)

奈良の大仏さま
  お昼寝なさる

紀州熊野の
  権現さまも   (ホホホノ ホイ)

ウンニヤ 魂消た
  お昼寝なさる

お釈迦さまさへ
  甘茶は飲むに  (ホホホノ ホイ)

昼寝するのが
  嘘だと言《ゆ》なら

空の天道さんに
  灸《やいど》 やかる   (ホホホノ ホイ)


[#1字下げ]伊奈波音頭[#「伊奈波音頭」は大見出し]
[#ここから4字下げ]
(岐阜の伊奈波神社は、五穀の守護神として名高し。この音頭〔藤井作曲〕は、五穀豊穣祈願の踊り歌として作る。)
[#ここで字下げ終わり]

[#2字下げ]一[#「一」は中見出し]

岐阜の伊奈波《いなば》さま
五穀の護り
五穀みのれよ
世は穏《おだやか》に

[#2字下げ]二[#「二」は中見出し]

五穀みのれば
お百姓繁昌
雨もうるほせ
彌日《いやひ》も照らせ

[#2字下げ]三[#「三」は中見出し]

里の後生楽《ごしやうらく》
五穀が大事
五穀波うて
穂に穂もなびけ

[#2字下げ]四[#「四」は中見出し]

雨が片降りや
日が出て照らせ
旱魃《ひでり》つづかば
雨雲おこせ

[#2字下げ]五[#「五」は中見出し]

今年や世がよい
家棟《やむね》の上で
岐阜の伊奈波さま
この里護る。


[#1字下げ]撫子[#「撫子」は大見出し]

河原の撫子《なでしこ》
おしやれな撫子
薄紅つけてる ヤーイ


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