島の
神山に
己が涙の
雨が降れ。
[#1字下げ]祇園町[#「祇園町」は中見出し]
友禅の 赤く燃えたつ
祇園町
銀の糸の
雨は斜に降りしきる
渋色の 蛇の目の傘に
降る雨も
上に下にと降りしきる
鴨川の 河原に啼いた
河千鳥
君と別れた路次口に
雨はしきりと降りしきる。
[#1字下げ]霞の中[#「霞の中」は中見出し]
甘茶が
沸いた
茶が
沸いた
鐘は霞の
中で鳴る
甘茶が
こげた
茶が
こげた
小鳥《とり》も霞の
中で啼く
甘茶が
はねた
茶が
はねた
花も霞の
中で咲く
甘茶が
燃えた
茶が
燃えた
鐘は霞の
中で鳴る。
[#1字下げ]恋の日[#「恋の日」は中見出し]
春の名残《なごり》の
暮るる日に
紅き花さへ
惜みたり
夕べ 畑で
恋人を
待ちしも
今は昔なり
夏のをはりに
露草の
白き花さへ
惜みたり
河原の岸で
恋人と
泣きしも
今は昔なり。
[#1字下げ]沢の螢[#「沢の螢」は中見出し]
一《ひー》 二《ふー》 三《み》
野寺の
鐘が鳴る
顔
蒼白き
旅人よ
野寺の
鐘は
野に響く
蜻蛉《あけづ》は
沼の
藻の花に
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