[#「生姜畑」は中見出し]
枯れ山の
芒《すすき》ア穂に出てちらつくが
赤い畑の唐辛《たうがらし》
帯にしめよか
襷《たすき》にしよか
どうせ畑の唐辛
石を投げたら
二つに割れた
石は磧《かはら》で光つてる
安《やす》が女房《にようぼ》の連ツ子は
しよなりしよなりと
もう光る
生姜畑の
闇の晩
背戸へ出て来て光つてる。
[#1字下げ]風が吹く[#「風が吹く」は中見出し]
己《おれ》が家の
うしろの沼に風が吹く
実にしみじみ
風が吹く
見れば見るほど
風が吹く
山の方から
風が吹く
広い河原の
砂利石に
風は鳴り鳴り
吹いて来る
己が生れた
この村の
井戸の釣瓶《つるべ》に
風が吹く
風は鳴り鳴り
吹いて来る。
[#1字下げ]篠藪[#「篠藪」は中見出し]
蝸虫《ででむし》よ
黙り腐つた
蝸虫よ
渦を巻いてる蝸虫よ
何が恋しい
篠籔に
さらさら さらと雨が降る
夢現《ゆめうつつ》に
己《おれ》は暮らした
蝸虫よ
己に悲しいコスモスの
花と花とに雨が降る
もう己の
家は最終《をはり》だ
蝸虫よ
田もいらぬ
畑もいらぬ
篠籔に
さらさら さらと雨が降る。
[#1字下げ]螢草[#「螢草」は中見出し]
垣根の外に
来ては泣く
故郷《ふるさと》の
恋しい唄に聞きほれて
垣根の外に
来ては泣く
下野《しもつけ》の 機場《はたば》に
しぼむ螢草《ほたるぐさ》
垣根の外に
故郷の
恋しい唄を
聞いて泣く。
[#1字下げ]霜枯れ[#「霜枯れ」は中見出し]
裏の田甫《たんぼ》で
鴫《しぎ》がゆふべ啼いた
ささげ畑の 嵐の晩も
君は忍んで 逢ひに来て
呉れた
裏の田甫で
鴫がゆふべ啼いた
鴫も田甫も霜枯れだけど
君は今夜《こよひ》も 逢ひに来て
呉れよう。
[#1字下げ]お糸[#「お糸」は中見出し]
雑木林の
啄木鳥《たくぼくてう》は
杉の枯れ木を
啄《つつ》いて啼いた
杉の枯れ木を
啄木鳥は
無性《むしよう》 やたらに
啄いて啼いた
掛けた襷の
解けたも知らず
涙うかべて
お糸は見てた。
[#1字下げ]麦の穂[#「麦の穂」は中見出し]
ちら ほら 麦の穂
出る頃は
こんこん狐の
目が光る
十六 酒屋の
姉 娘
こんこん狐に
ついてつた
酒屋のうしろの
篠籔に
狐がまた来て
覗いてる。
[#1字下げ]女工唄[#「女工唄
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