石川啄木と小奴
野口雨情
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)歿《なくな》つて
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)我等|扈従《こせう》記者
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#「そばや」に傍点]
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石川啄木が歿《なくな》つてからいまだ二十年かそこらにしかならないのに、石川の伝記が往々誤り伝へられてゐるのは石川のためにも喜ばしいことではない、況《いは》んや石川が存生中の知人は今なほ沢山あるにも拘はらず、その伝記がたまたま誤り伝へられてゐるのを考へると、百年とか二百年とかさきの人々の伝記なぞは随分信をおけない杜撰なものであるとも思へば思はれます。ですから一片の記録によつてその人の一生を速断するといふことは、考へてみれば早計なことではないでせうか。
私の思ふには石川が最後に上京して朝日新聞在社時代の前後や、晩年の生活環境については石川の恩人であつた金田一京助氏が一番正確に知つてゐるはずで、同氏によつてその時代のことを書かれたものが、正確なものだと考へられるが、北海道時代、ことに釧路時代の石川のことに
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