千年織つても
トントンカラリン
万年織つても
トントンカラリンと
歌つて織りました


 西吹く風

山から
海から
秋が来た

河原の楊《やなぎ》の
葉が
枯れた

渚の 芒《すすき》の
葉も
枯れた

山から
西吹く
風が吹く

海から
山吹く
風が吹く


 雀の子供

雀の 子供が
生れたよ

穀倉《こくぐら》の 廂《ひさし》で
生れたよ

昨日は 一羽
今日は 二羽

雀の 子供が
生れたよ

河原の お藪で
生れたよ

昨日は 一羽
今日は 二羽

河原で 生れた
藪雀

廂で 生れた
軒雀

チンチン 啼き啼き
生れたよ


 千代田のお城

千代田の お城の
鳩ぽつぽ

鳩ぽつぽ ぽつぽと
啼いてたよ

千代田の 御門《ごもん》の
白い壁

千代田の お濠《ほり》の
青い水

鳩ぽつぽ ぽつぽと
啼いてたよ


 上野のお山

上野のお山の
かん烏

神田の子供は
何にしてた

表の 通りで
遊んでた

上野のお山の
かん烏

神田の子供は
何に見てた

何んにも見ないで
屋根見てた


 呼子鳥

子供が ゐたかと
呼子鳥《よぶことり》

かつぽん かつぽん
呼子鳥

子供は お山の
靄の中

子供は 谷間の
霧の中

子供が ゐたよと
呼子鳥

かつぽん かつぽん
呼子鳥


 屋根なし傘

おぼろお月さんは
花嫁さん
屋根なし傘《からかさ》を
さしてゐる

おぼろお月さんは
花嫁さん
屋根なし傘で
濡れてしまふ

丸い蛇の目の
傘を
おぼろお月さんに
かしてやろ

おぼろお月さんは
花嫁さん
星根なし傘で
濡れてしまふ


 山彦

山に 山彦
尾長鳥

 呼んでも 呼んでも
 ホーイホイ

山の お星さん
はなれ星

 待つても 待つても
 ホーイホイ

河に 翡翠《かはせみ》
河雀

 呼んでも 呼んでも
 ホーイホイ

河原の お星さん
はなれ星

 待つても 待つても
 ホーイホイ


 桜と小鳥

いい歌 聞かそ
いい歌 聞かそ

桜の 花の
いい歌 聞かそ

小鳥の 歌の
いい歌 聞かそ

桜の 歌は
どの子に聞かそ

小鳥の 歌は
どの子に聞かそ

あしたの朝は
この子に聞かそ


 二つの小鳥

畑で 米磨ぐ
なんの鳥

あれは 畑の
みそさざい

跣足《はだし》で 米五合
磨いだとサ

河原で 機織る
なんの鳥

あれは 
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