いてゐる

風呂場で 風呂炊く
風呂の火が
煙くて 煙くて
鳴いてゐる

ころころ ころころ
※[#「虫+車」、第3水準1−91−55、22−下−1] が
ころころ ころころ
鳴いてゐる

甕からこぼれた
甘酒を
飲ませておくれと
鳴いてゐる。


 酸漿提灯

おら家《いへ》の 提灯
酸漿《ほほづき》提灯
畑さ 提灯 ぶらさげた

となりの 提灯
酸漿提灯
畑さ 提灯 ぷらさげた

畑の 提灯
酸漿提灯
夜昼 提灯 ぶらさげた


 お山の烏

カツコカツコ帰れ
お山の烏

明日《あした》は 雨だ
カツコカツコ帰れ

鳩ポツポ啼いた
ポツポポツポ啼いた

お山の烏
カツコカツコ帰れ。


 青い青い海

山から
タツチクだ
海から
タツチクだ
タツチク タツチク タツチクだ

父《とと》さん恋し
母《かか》さん恋し

海鵯《うみひよどり》も
タツチク タツチク タツチクだ
青い青い海を
見てたが
いいか。


 迷子

赤い帯しめた
赤い下駄《かつこ》はいた

どなたと行つた
一人で行つた

どこまで行つた
どなたも知らぬ

八幡《はちまん》様の
狐に聞いた。


 鶏さん

雛《ひよこ》の母《かか》さん
鶏さん
鳥屋に買はれて
ゆきました

大寒 小寒で
寒いのに
雛と わかれて
ゆきました

雛に わかれた
母鶏《ははどり》さん
鳥屋で さびしく
暮すでせう。


 十五夜お月さん

十五夜お月さん
御機嫌さん
婆やは お暇《いとま》とりました

十五夜お月さん
妹は
田舎へ 貰《も》られて ゆきました

十五夜お月さん 母《かか》さんに
も一度
わたしは逢ひたいな。


 鼬の嫁入り

今夜は鼬の嫁入りだ
鼬に
長持貸してやれ

厩《うまや》の うしろの
篠籔に
鼬が提灯つけてゐた

厭の うしろの 篠籔は
霜枯れ篠籔
おお 寒い

今夜は鼬の嫁入りだ
鼬に
駒下駄貸してやれ。


 烏猫

烏猫 烏猫
眼ばかり光る
烏猫

のろり のろり 歩いてる
ほんとに狡い
烏猫

矮鶏《ちやぼ》の雛《ひつこ》 追つかけた
尻尾の長い
烏猫

厩《うまや》の背戸に
昼寝しろ
ぐうぐうぐう昼寝しろ

火箸が ぐんにやり曲るほど
たたいてやるから
昼寝しろ。


 百弗

猫の小母《をば》さん
木兎《みみづく》さん
百|弗《どる》貸すから
家建てろ

石で たたんだ
家建
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