が啼いた 雉子が啼いた
山で啼いた

茨に刺されて
雉子が啼いた

雉子が言ふた 雉子が言ふた
山で言ふた

足袋縫ふて はきませうと
雉子が言ふた。


 鼬と雀

ここの家は
引つ越して
雨戸が 締つてをりました

お庭の お庭の
真中に
鼬《いたち》が 歩いてをりました

ここの家は
引つ越して
雨戸が 締つてをりました

お庭の お庭の
木の上に
雀が遊んでをりました。


 鈴虫の鈴

鈴虫 鈴虫
チンチロリン
鈴 どこから持つて来た

母《かか》さんお嫁に
来るときに
番頭《ばんと》に負《しよ》はせて持つて来た

鈴虫 鈴虫
チンチロリン
鈴 ちよつくら貸してみろ

貸したら返さぬ
あーかんべ
番頭に負はせてやつちやつた。


 みそさざい

ちツ ちツ
啼いてる
鷦鷯《みそさざい》

畑に
赤牛
立つてたぞ

雨こんこ
パラパラ
降つて来た

傘《からかさ》
ささせる
こつちへ来《こ》。


 象の鼻

象に猿衣《ちやんちやん》 着せたら
うれしがろナ
赤い帽子 かぶせたら
うれしがろナ

象に靴はかせたら
あるきだそナ
象の足 太いから
重たかろナ

象の眼は 小《ち》さいから
ねむたかろナ
象の鼻 長いから
日が暮れるナ。


 四丁目の犬

一丁目の子供
駈け駈け 帰れ

二丁目の子供
泣き泣き 逃げた

四丁目の犬は
足長犬だ

三丁目の角に
こつち向いてゐたぞ


 柿

五兵衛さん娘が
柿 持つてた
おいらに見せ見せ
柿 持つてた

隣の ぼんちも
柿 持つてた
おいらに見せ見せ
柿 持つてた

柿 買つて食べたい
銭《ぜんぜ》 おくれ
向ふの小母《をば》さん
銭 おくれ

おいらが母《かか》さん なぜ死んだ
おいらにだまつて なぜ死んだ
草端《くさば》の蔭から
柿 おくれ。


 糸切

糸切虫に
どの糸切らせう

ほぐれた糸を
よりより切らせう

糸切虫は
赤い糸切つた

小さな口で
ぽきんと切つた。


 人橋

隣の家は
昨日も るすだ

厩《うまや》の 背戸に
蚯蚓《みみず》が鳴いつた

人橋かけろ
どんど橋
かけろ

姉上さまは
馬に乗つて
行つた。


 ※[#「虫+車」、第3水準1−91−55、22−上−3]

ころころ ころころ
※[#「虫+車」、第3水準1−91−55、22−上−5]《こほろぎ》が
ころころ ころころ

前へ 次へ
全9ページ中4ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
野口 雨情 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング