札幌時代の石川啄木
野口雨情
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)不可《いけない》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)岩崎|郁雨《いくう》氏
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから2字下げ]
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石川啄木の代表作は和歌にある。或る人の言はるるには、啄木の作品のどれを見ても深みが乏しい、もつともつと深みがなくては不可《いけない》、要するに歳が若かつた為めだらう、今二三十年も生存してゐたら、良い作品も沢山残しただらうと、斯うした見方も一つの見方かも知れないが、私はさうとは考へてゐない、和歌は散文でなく韻文だからヒントさへ捉めばそれでよいのである、そのヒントさへ捉み得ない詩人歌人の沢山あることを知つて頂きたい。
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故郷《ふるさと》の山に向ひて 言ふことなし 故郷の山は 有り難きかな
[#ここで字下げ終わり]
これは啄木の北海道時代の頃の作だが、啄木の作中でも優秀なものと思ふ。この作品なぞもヒントばかりで捉へどころが浅いと思ふだらうが、この浅いと思ふところに限りなき深さが
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