永い月日だ
雛芥子の花
枝垂れ柳に
雨さへ降るし
すさみはてたよ
ゆるしておくれ
いつそ田舎に
ゐりやよかつた
[#1字下げ]異国船[#「異国船」は中見出し]
南の風が今日も吹く
筑紫の 海へ
阿蘭陀の
船が来るぞへ
惣八さん
この世は夢だと思やんせ
浪華の 夢は
一夜草
みぢかい みぢかい
一夜草
南の風が今日も吹く
沖に見ゆるは
阿蘭陀の
三角白帆の
異国船
この世は夢だと思やんせ
[#1字下げ]上野駅[#「上野駅」は中見出し]
女姿《をやま》で暮らす
新潟の
港へ帰る旅役者
カラン コロンと
冬の夜の
新潟行の汽車が出る
白粉やけのした顔で
新潟の
港へ帰る旅役者
カラン コロン
カラン コロンと
新潟行の汽車が出る
[#1字下げ]七つの島[#「七つの島」は中見出し]
佐渡は 離れ島
隠岐も
離れ島
伊豆の 八丈も
皆離れ島
伊豆に
七つの
父島 子島
七つ子島も
皆離れ島
離れ島ゆゑ
恋しうて
これさ
伊豆の子島の
七つの島はよ
[#1字下げ]憂心[#「憂心」は中見出し]
恋は さめたし
この世は
夢か
恋も 捨てたし
この身も
夢か
なぜに かなしい
この世の
夢よ
[#1字下げ]狐[#「狐」は中見出し]
霜の降る夜《よ》に
狐が
啼いた
尻尾重たかろ
足が
冷たかろ
田甫《たんぼ》そこらここら
一晩中
啼いた
[#1字下げ]蘆の芽[#「蘆の芽」は中見出し]
東京の硝子の窓に
雨が降る
しどろもどろに
春の夜の
雨は硝子の
窓に降る
ふるさとの
蘆《あし》の芽にさへ
春の夜の
雨はしどろに
降りしきる
帰りませうかふるさとへ
別れませうかこの君と
しどろもどろに
春の夜の
雨は硝子の
窓に降る
[#1字下げ]枯れ田[#「枯れ田」は中見出し]
稲は刈られた
鴫が来て啼いた
ちよこら ちよこらと
歩き 歩き
啼いた
あまり細い声だ
可哀想に
思うた
うすら寒い風が
田の中に吹いてる
[#1字下げ]忘れてる[#「忘れてる」は中見出し]
おでこ 娘は
十六むさし
ちさいとき泣いた顔
忘れてる
京都|智恩院《ちおゐん》の 廂の上に
大工さんも
傘《からかさ》
忘れてる
おでこ 娘は
十六むさし
泣いたことないよな
顔してる。
[#1字下げ]風は南風[#「風は南
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