ではないに サイサイ

千鳥ア宵から
  チロチロリンと啼きやる

寒や 河原の
  夜明し千鳥 サイサイ

わたしや恋路で
  ゆくぢやない

恋や恋路で
  忍んだ頃は サイサイ

赤い焔の
  火も吐いた


[#1字下げ]お艶[#「お艶」は大見出し]

お艶《つや》が風呂に
   はいつてゐると
若い男が
   だましに来た
小《ちひさ》い声で
   だましてゐる

お艶がざぶり湯を
   かけてやると
男はうろうろ
   してゐたが
裏からすうつと
   逃げていつた

馬は厩《うまや》で
   馬堰棒《ませんぼ》を
がらんがらんと
   鳴らしてゐる
天の川は
   北から西へ流れてゐた


[#1字下げ]寝ずの番[#「寝ずの番」は大見出し]

寝ずの番すりや
   この夜の長さ

錆りや腐れる
   腐れりや朽ちる

月も霜夜にや
   霜枯れ姿

東ア白むにや
   まだ長い


[#1字下げ]こんこん狐[#「こんこん狐」は大見出し]

[#2字下げ]一[#「一」は中見出し]

急ぎやれ 急ぎやれ この道は
こんこん狐の出る道ぢや 出る道ぢや

     さアさ急いで

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