《かよ》てゆきたや
   船大工さんよ

  船大工
汐にせかれりや
   橋ア流る

  娘
橋が流れりや
   わたしも流る
小舟ほしいや
   船大工さんよ

  船大工
舟も櫓がなきや
   流される

  娘
橋はせかれる
   舟ア流される
通て来るなか
   船大工さんよ

  船大工
命《いのち》帆《ほ》にして
   通て来よ


[#1字下げ]恋の巣立ち[#「恋の巣立ち」は中見出し]

恋の巣立ちか
   夕《ゆふべ》のお星や
  触れりや落ちそにもう出てる

触れりや落ちそに
   もう出てる

女なりやこそ
   涙ももろい
  恋の甘さにや泣かされる

恋の甘さにや
   泣かされる

空はたそがれ
   夕のお星や
  うぶな心であこがれる

うぶな心で
   あこがれる
[#改段]

鴫の声[#「鴫の声」は大見出し]

[#1字下げ]鴫の声[#「鴫の声」は中見出し]

晩げになつても
お母《つか》さんが来ない

お母さん来るかと
出て見たりや

スイスイちけ
鴫の声

鴫は田で啼く
可愛《かあい》鳥《とり》

待つてもお母さんの
来ないときや

せどの田甫で
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