先やどうでも
青空まかせに
飛ばなきやならない
帆かけた船なら
行く先やどうでも
吹く風まかせに
走らにやならない
引かれた袖なら
行く先やどうでも
行く先まかせに
行かなきやならない
流れる水なら
行く先やどうでも
瀬と淵まかせに
流れにやならない
[#1字下げ]横丁生れ[#「横丁生れ」は中見出し]
お乳母日傘の
娘さん達よ
わたしや下街《したまち》
横丁の生れ
蝶よ花よぢや
育ちやせぬ
産みの親より
育ての親ぢや
親も横丁の
角《かど》生れ
わたしや皆さん
気も荒い
[#1字下げ]狐見るたび[#「狐見るたび」は中見出し]
狐見るたび
おら考へる(ドツコイ)
可愛女に
なぜ化けぬ
化けてくれれば
話しもあるが(ドツコイ)
化けにや狐と
話されぬ
[#1字下げ]踵[#「踵」は中見出し]
踵《かかと》たたいたりや
踵見て泣いた
踵見ながら
笊投げた
笊は空笊《からざる》
ころげてまはりや
踵忘れて
笊見てる
[#1字下げ]子蜂[#「子蜂」は中見出し]
梨の番すりや
蜂の子が憎や
子蜂アな
子蜂ア飛んで来て
梨刺した
[#1字下げ]あの山蔭[#「あの山蔭」は中見出し]
山は 霜枯れ
月や細枯れる
お月や出てても
あの山蔭にや
鬼が棲む[#「棲む」は底本では「褄む」]だろ
なヨ 母《かか》や
[#1字下げ]もと米磨ぎの唄[#「もと米磨ぎの唄」は中見出し]
桶をながめてお米が磨げりや
お百姓さんは
田さへながめりや蔵が建つ
(トコ トコダト磨ぎぬきな)
一桶《ひとをけ》磨ぐのにや十桶《とをけ》の水汲み
夜明けの明星は
まだまだチラリだ
(トコ トコダト磨ぎぬきな)
この桶あげなきや仕込みがおくれる
仕込みがおくれりや
お暇《いとま》出される
(トコ トコダト磨ぎぬきな)
お暇出されりや酒蔵《おくら》とおわかれ
そのときや
あの娘《こ》と泣きわかれ
(トコ トコダト磨ぎぬきな)
そのときやそのときおさらばさらばだ
天道《てんと》さままかせに
足まかせ
(トコ トコダト磨ぎぬきな)
さうなりやこの地へ来年来るやら
当《あて》さへないから
尚更あの娘《こ》と泣きわかれ
(トコ トコダト磨ぎぬきな)
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