寧樂
内藤湖南

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【テキスト中に現れる記号について】

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)貌の妍※[#「女+蚩」、361−15]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ゆる/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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     寧樂 一

浪華三十日の旅寢、このたびは二度目の觀風なれば、さまでに目新らしくも思へず、東とはかはれる風俗など前よりは委しく知れる節もあれど、六十年の前に人の物せる「浪華の風」といふ一書、温知叢書の中に收められしといたく異なれりと見えざるは、世の移りかはり、疾しといへば、疾きが若きものから、又遲しといへば遲くもあるかな、面白かりしは此の間兩度の寧樂行なり。汽車にて一時間半の道程、往くも來るも旅といふ程の用意を要せぬ便利なる代りには、大和巡りとて行李を肩に鞋を足にゆる/\と月日を消すべき支度せんもうるさければ、一寸出かけては一寸かへる、兩度の遊觀もかいなでの名處より外に目も及ばず、汽車の便よしといふ長谷、談峯さては
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