東洋民族は其點に於て、如何なる難解な、如何なる高尚な文化でも、どこまでも進んでそれを吸收して、さうして自分の文化と之を一緒にしてやつて行かうといふ大きな希望と決心とを有つて居るやうであります。さうなつて來ますと、こゝに東西文化融合の希望も達せられるのではないかと思ふのであります。是は豫言でありますから、中るか中らないか分りませぬ、併し現在は兎に角どちらかと申せばさういふやうな傾になつて居ると云ひ得ると思ふのであります。世界の最も完全なる文化を形作る爲には、自分で從來有つて居つた文化の價値を十分に認めて、さうして何處までも其長處を保持して、更に他の長處も十分取入れるといふことが必要であつて、自分の文化に心醉して、他の文化を全く排除するといふことは、決して最良の手段ではないと思ふのであります。以上私の考のほんの骨組だけを申上げました次第であります。
[#地から1字上げ](大正十年某月某處講演)
底本:「内藤湖南全集 第九卷」筑摩書房
1969(昭和44)年4月10日発行
1976(昭和51)年10月10日第3刷
底本の親本:「増訂日本文化史研究」弘文堂
1930(昭
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