ので、なか/\解釋し難いが、獻物帳の織成といふのが如何なるものであるか、自分も未だ實物に就いて研究したことは無い。
此の時代の切《きれ》は、昔は正倉院か古い寺院等の寶物でなければ無い種類のものが多いので、從來の切《きれ》の學問としては全く特別扱のもので、一般に研究せられて居らなかつた。これが研究者の注意を惹き出したのは明治以後といつても宜しいのである。然し染織の專門家も學者も互に一致する迄研究を進めたことが無いので、之を將來に望まざるを得ないのである。
宋以後の織物はこれ迄も隨分研究せられて居る。それは一には※[#「ころもへん+表」、第4水準2−88−25]裝用の切《きれ》と茶器に附屬した切とに使用せらるゝが爲である。それに就てはいろ/\な分類の仕法《しかた》もあり、茶人などは其の道に達した人が尠くない。但併し其の名稱などは、傳來の歴史的關係から命名せられたものもあり、或は其の織物の性質上からつけられたものもあり、一定の原則が無いので非常に解り難い。專門家はこれを片端から實物について覺え込むだけの事で、數百種にも上る種類を、此の混雜した名稱で覺え込むことは餘程の勞力を要する。殊に近
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