だけが本の目録であつて、其の一つの輯略といふものは即ち總評とも謂ふべきものであります。さういふ順序で最初の目録が出來ました。さうして班固が漢書を編纂する時に、殆ど其の儘を採つた。尤も劉向、劉※[#「音+欠」、第3水準1−86−32]が歿くなつてから後に出來た本は、新たに書き加へられましたが、しかしこれは僅かなものであります。これで支那最初の目録が出來たのであります。
 其の時の目録の作り方は、七略と申しますが、輯略を除けば即ち六部に分けて居る。第一は六藝略といふのでありまして、これは今の經書であります。第二は諸子略といふので、これは老子とか莊子とか荀子とかいふやうなものでありまして、之を十種に分けて居ります。儒家、道家、陰陽家、法家、名家、墨家、縱横家、雜家、農家、小説家の十種であります。第三は詩賦でありまして、これは一番の元祖が屈原の離騒でありまして、即ち今で申すと純文學といふやうなものであります。それから第四は兵家でありまして、其の兵家の中にも四通りに分けて居りますが、其の四通りに分けた工合を見ると、兵の理論に關係したやうなもの、例へば兵の權謀、これが總論で、それから兵の陰陽といふやうなことがありますが、これは日柄の吉凶とか、星の事とか、種々の占の事など、古昔に兵事上に必要と認められた事に關係したもの、それから兵形勢といふのは戰術の書、兵技巧といふのは攻守の器械並びに訓練などの專門の事で、武藝の方にまで關係したことを集めてあります。かういふことは、兵學上の專門のことを知つて居るものでなければ出來ませぬから、これは歩兵校尉の任宏といふ人が調査をして居ります。それから第五が數術となつて居ります。これには天文があり、それから暦譜、五行の事があり、蓍龜即ち占の事があり、其他雜占といふ夢占とか、嚔、耳鳴の占とか、細かい種々の占のことがある。それから形法といふ、これは今の家相、方位のやうなことであります、さういふやうなものを數術と名づけまして、それを第五として居る。それから第六は方技であつて、即ち醫者の事であります。これも醫經、經方、房中、神仙の四通りに分けてあります。さういふのが此の劉向、劉※[#「音+欠」、第3水準1−86−32]の分け方でありまして、さうして其の外に輯略といふのを附けて居ります。これは劉向が多くは書物を校正しますのに、天子の御手許にある中書といふのと、それから外から集めた本、其の中には、劉向自身が持つて居る本やら、其の外の編纂官の持つて居る本、又は其の他の者の持つて居る本を集めて校合をして居りますが、一通り校合の總體の事を申しまして、それから其の本の成立ちを論じて居ります。さういふものを一々の本に附けたのでありますが、それを悉く寄せたものが即ちこの輯略であらうといふのであります。輯略は今は遺つて居りませぬから分りませぬが、藝文志に書いてある所を見ると、さういふものであつたらしく思はれる。これが劉向、劉※[#「音+欠」、第3水準1−86−32]の目録の作り方の大體でありまして、兎に角此の時は、總論と各目録を寄せて七部に分けてあります。
 其の後、支那の目録の作り方が、此の七部の分け方と、其の後に出來ました四部の分け方と、互ひ違ひに行はれて居る。七部の分け方も餘程長い間行はれて居りました。内容は漸々違つて來て居るが、ともかく長く行はれて居つた。それで現在は支那の分類は主もに四部であります。それは經書、歴史、諸子類、詩文集類と四部に分けてあります。此の四部の分け方の始めは、晉の時となつて居りますが、元來三國魏の時に出來た四部の目録がありまして、それに依つて晉の荀※[#「瑁のつくり+力」、第3水準1−14−70]が四部の目録を作つた。其の時、これを甲乙丙丁に分けた。其の順序は、經書が第一、諸子類が第二、歴史が第三、詩文集が第四となつて居る。所がそれから後になつて順序を變へた。晉は間もなしに非常な亂世になつて、王室は長江以南に逃げて、其の時に有らゆる本が皆無くなつた。それから江南地方で國を中興して東晉になりますが、此の時代に李充といふ者が四部の目録を作つた。此の時に順序が變つて、今日の如く經書、歴史、諸子、文集といふ順序になりました。此の荀※[#「瑁のつくり+力」、第3水準1−14−70]、李充の分け方が今日の四部の目録の始めであります。
 しかし此の四部の目録が始まると、其の後皆此の法を採用したかといふとさうではない。後になつて又七部に分ける目録の作り方が行はれて居る。それは南朝の劉宋の時であります。其の時にやはり官の書籍を調べた王儉といふ人が七志といふものを作りました。それで此の分け方は、經典といふのが一つで、これは經書と歴史と一緒になつて居る。これはやはり劉※[#「音+欠」、第3水準1−86−32]の七略の分け方と同
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