と唯だ申しては分りませぬが、詰り唐の時には詩でもつて文官試驗を致しました。即ち試驗の重もなる科目の中に詩があつたのであります。それで文官試驗に應ずる爲には、細かしい詩の規則を知らなければならぬ。一字の置き處が間違つても、一字の聲が間違つても、詩は落第を致します。それで當時の人は其の細かしい規則を記憶しなければならぬ。隨分厄介なことで、是は日本でも其の儘採り用ひました。日本でも大學の文章博士と云ふものになる爲には、矢張り支那と同樣に詩の試驗をして、一字でも聲が間違ふと試驗は落第を致します。それで其の時代には一字でも半句でも詰りさう云ふ規則と云ふものが非常に大切なものであつた。併しそれを皆研究して居つた。細かしい規則でありますけれども、それを知らぬと云ふと、當時の試驗の模樣も分らず、又當時の詩の作り方も分らぬのであります。詰りそれ程其の當時に於ては貴重なものであつた。それで管々しいことだからと云うて、又今日から見て餘り役に立たぬからと云うて、其の當時それ程に重んじて、一國の秀才を試驗をするのに用ひた規則を、唯だ詰らないものと一と口に言つて仕舞ふべきものではなからうと思ふ。楊守敬などは今日の
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