きに、其の目録學の根柢を有し、確乎たる法式によりて批判せること、上の如くなれば、余は之を讀書人に推薦して其の一讀を勸めんと欲す。
 書中に又
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書を多く聚るを人中の賢者とすべし
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といひ、聚書讀書の利益を説きたるは、和上自身が數萬卷の藏書を有せしにもよるべけれども、其の讀書が一貫せる批評眼によりて要約され、徒らに博洽を誇りしにあらざることを知るに及びて益々其の貴さを加ふべし。
 余は已に數年前に於て、此書の原刻本を獲たるが、本年二月、大阪の某書肆の目録に、復た此書を載するを見、大阪に此書の眞價を解する讀書人ありや否やを徴せんが爲に、試みに再び之を注文して、其の存否を驗せしに、日ならずして再び此書の第二本を獲たり。僅かに參圓五拾錢を費して、大阪二百萬市民の讀書眼を試驗し得たるは、豈に廉價至極ならずや。呵呵
 附記 敬首和上の傳は淨土宗全書第十卷、略傳集中に在り就て見るべし。
[#地から1字上げ](大正十五年十月「典籍の研究」第五號)



底本:「内藤湖南全集 第十二巻」筑摩書房
   1970(昭和45)年6月25日発行
   1976(昭
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