※[#「骨+低のつくり」、第3水準1−94−21]骨がある位のものと私は考へて居る。昔の貴族は政治の外にいろ/\高尚な生活をして居りました。貴族には學問もあり、藝術もあり、工藝もあり、いろ/\な生活要素を持て居りましたが、平民といふものは支配される一方であつて、さうして君主といふものは謂はゞ支配する一方であつて、共に至つて簡單な生活を營ませられて居つた。それで平民が哀れなものであると同時に、君主も隨分哀れなものであつた。君主はいろ/\な道徳を強ひつけられて、人間なみの欲望を遂げる機會が至つて少い程に強ひつけられまして、さうして纔かに生活をして居つたので、それで君主と人民とは生活が至つて貧弱になつて居たのであります。
 それが平民時代になつて來ますと、だん/″\平民の生活の要素が豐富になつて來ます。平民が人に服從する爲の必要でなく、自分の生活の爲に道徳を必要とするやうになり、平民が知識を持つやうになり、平民が趣味を持つやうになつて來ました。斯ういふことは貴族時代には平民には大して必要がなかつたのみならず、又持ち得なかつたものであります。貴族時代には平民は唯税を搾り取らるゝ道具みたやうなも
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