つもりであります。でありますが、どうかすると世界の民族生活といふものゝ將來の暗示を、支那の状態によつて得らるゝといふことは有り得ると思ひます。併し國情が現在のやうに混亂して居るといふと、又今までの歴史や事情で考へたことが屡々引くり返つて、近代の支那を研究して居る人は皆閉口して居る。今までいろ/\材料を揃へて結論を付けて見ると皆引くり返つてしまふ、こんな筈はなかつたと思ふが皆引くりかへる。これで屡々支那通のいふことはちつとも當てにならぬなどゝ世間から言はれますが、それは實は學問をしない人の淺はかさで、もう二十年か三十年待つて見ると、一定した近代生活の事相が出て來る。結局は支那人といふものは、自分の優越性を大變認めて居る國民でありますから、ロシアの眞似をして見たり、その前は日本の國會政治を學ばうとしたりしましたが、結局支那人は自己の優越性を認めて、やはり從來の支那式にする方が宜いといふことになりはしないかと思ふ。それが支那の近代生活から支那の運命に對して考へた極く貧弱な結論であります。
[#地から1字上げ](昭和三年七月東亞同文會講演會講演)



底本:「内藤湖南全集 第八卷」筑摩書房
   1969(昭和44)年8月20日発行
   1976(昭和51)年10月10日第2刷
底本の親本:「東洋文化史研究」弘文堂
   1936(昭和11)年4月発行
初出:東亜同文会講演会講演
   1928(昭和3)年7月
入力:はまなかひとし
校正:菅野朋子
2001年8月7日公開
2006年1月16日修正
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