に出てゐるのであります。そして敵の立て籠つた所は仕方がないにしても、さうでもない所を打ち壞し又は火を掛けて燒き拂ひ或は財寶を掠め歩くといふ事は偏へにひる強盜といふべしと言つて居ります。そして是を取締らないといふと政治が出來んといふ事を言つてゐますが、是は即ち貴族階級の人から見た最も痛切な感じであつたに違ひないのであります。當時應仁の亂を見て貴族階級の人が痛切に感じた事は實際さういふ事であつたのであります。
さういふ風に足輕が亂妨し跋扈したといふ事に就てはまだ面白いことが書いてあります。私は此前に日本の肖像畫の事を話したことがありまして、それは「歴史と地理」の鎌倉時代の文化の所に出て居りますが、それに私は足利時代は亂世である、亂世の時には時々個人の能力あるものが非常に現はれるものであるが、足利時代は亂世であるに拘らず一向天才が現はれない、個人の能力のすぐれた者が頭を出さない時代であつたといふ事を申しました。勿論是は大體から考へて言つた事で、一々證據を擧げる段になると多少の取除を生ずることは勿論でありますが、しかしながら樵談治要を見ると、當時の人が又さういふ事を感じて居つたといふ事が分り
前へ
次へ
全35ページ中10ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
内藤 湖南 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング