とのたまふよし孝庸の説と云々
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何もかも源氏物語で濟む、當時の學問といふものは源氏物語一つあればそれでいゝといふので、源氏は詰りよく一般の世態を知つて世の中を經綸するために唯一の大事な經典であるとされて居つたのであります。源氏物語を以て國民思想を統一するなどといふことは今日の文部省などの思ひもよらぬ所であります(笑聲起る)。一般には亂世で政治上殆ど何等統一などのなかつた時代に、何か或る者で統一しようといふ考が一般の人に出來て參りまして、此等の傳授によつて其の祕訣に達することが、文化的に世の中を統一すべき智識を得る所以であると思つてゐたのですが、そこらはよほど面白い所であります。是は即ち日本の亂れた時代に於ても尚且是を統一に導く所の素因が出來て居つたといふことを示すものであります。
尚智識普及に於て一つ例を言ひ殘しました。それは私共漢學の方でありますが、漢學の方も其當時に於て一つの變化を示しました。即ち漢學といふものもやはり貴族の學問から一般の學問になる一つの段階を作つたのであります。漢學の一つの大きな變化といふのは、昔は古注の學問、其頃は四書五經とは申しませぬ
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