らう。今日になつて見れば當時幕府に味方した人も、長州並に浪人等を引き立てた人も、皆同じく朝廷の爲め國家の爲めを思うて爲たことであらうから、少しも憚る所なく材料を提供すべきであると思ふ。殊に維新史料編纂局においては、從來若しそれらの材料を調べずにあつたならば、今日においては努めて反薩長派の材料をも蒐集して、公平な態度を執らなければならぬと思ふ。其の材料によつて歴史家が如何に判斷するかは各※[#二の字点、「各※」で「おのおの」、面区点番号1−2−22、163−5]の觀方であつて、從來の如く薩長が連合して革命を起した事に味方する人もあらうし、又公武一體で穩和な改革を企てた方に贊成する人もあらう。要するに材料の取扱ひ方だけは、今日においては井上侯爵中心時代を全く放れる必要がある。
(大正十一年八月談話筆記)[#地より1字上げ]
底本:「内藤湖南全集 第九巻」筑摩書房
1969(昭和44)年4月10日発行
1976(昭和51)年10月10日第3刷
底本の親本:「増訂日本文化史研究」弘文堂
1930(昭和5)年11月発行
初出:談話筆記
1922(大正11)年8月
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