て、やりかけて仕事を終るという有様だ。夕方はいよいよ暗くならないと点かない、今これを書いて居る三月上旬は、朝は先ず五時から六時の間頃ぱったりと消えてしまう。夕方は五時過でなければ点燈しない。弥之助の様に早朝を書きものに費すものにとってこの時間でぱったり止められてしまうのは実際腹が立ってたまらぬ、それから午後の五時なども曇天雨天の日などは室内で文字を料理する事などは出来はしない。電燈の無かった時代を考えて見ろ、贅沢は云えたものでないと云われればそれまでだが、すでに電燈が有って人を信用させる事になっている以上は如何してもう一息の利便が計れないのか。
それから田舎の電燈料というものが比例を外《はず》れて高いことは、即今都会に比較した精密な計算は持たないけれど、それは馬鹿げた高価である、そうして同じ会社の配電でありながら町村によって料金がまちまちなのである、あながち土地の便不便によるのではない、何の標準でそう甲乙があるのか素人《しろうと》には更にわからない。
もう一つは営業ぶりの横暴と不親切が田舎に住んで見るとそれも露骨に解る、たとえば電力や点燈の申込みをしても容易な事では取りかからないが
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