で解放してやると、大てい二ツが重なりあってチョコナンとして居る。
猫にあてがう食事としてはこちらの飯を分けてけずり節を少しかけてやる程度だが、魚類があれば少し分けてやる、生がかったメザシよりは干物の方を好んで食う、またあんパンなんどをつまんでやると飯よりはかえってよろこんで食う、いまの処|肴《さかな》よりはかえってパンが好きらしい。あんパンもあんの部分だけは食わない、ビスケットなどは噛んでやればよろこんで食べる、この二ツのうち、三毛の雌の方が丈夫でトラの方が少し痺弱《ひよわ》いようだ、組打をしてもトラの方が押され気味で、いつもねわざに受けて居る。或晩このトラが、炬燵《こたつ》へ這《はい》って来て如何にも元気がない、やっと炬燵の上へ這い上ったところを見るとぺしゃんこになって、一枚と云いたいほど平べったくなってしまって居る。そこで驚いて牛乳の残りを飲ませなどして居ると、やがて元気は恢復したが三毛にくらべると影がうすい様だ――併し程経てこれは反対の現象を呈して来た。
塾の成進寮の二階に鼠が横行して居る。白昼もばたばた横行している。夜になると家鳴震動して土を落しごみをおとす。どうも寝られな
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