団《かけぶとん》の間へ入れて寝かしてやる、無精によくねる、いくら寝ても飽きたと云う事を云わない、夜昼寝つづけに寝る、たたき起してほうり出すといやな顔もせず飛びまわったりじゃれついたりする。ことに夕方が一番はしゃぐ様だ、猫のじゃれるのとちょっかいを見て居ると如何にも可笑《おか》しい、これは本能的の躍動だが、かくれん坊するのを見て居るとどうも少し意識的にやる様だ、一つが障子《しょうじ》の外へ飛び出してじゃれて居ると一つがこちらの柱の陰にかくれて待ちかまえて居る、そうすると前に飛び出したのがまた戻って来る、その出合頭《であいがしら》にバーッと云う様な様子で左足のチョッカイでおどりかかるところなどは人間の子供の遊びと少しもかわらない。
食事の時などは膳へたかったり、うろつきまわってうるさい、追い飛ばしたってどうにもならない、そう云う時は断然|桶伏《おけぶせ》の刑に処するのである。桶伏と云うのは二ツをまとめて有合せの笊《ざる》をかぶせその上へ重しの本をのせて置く、最初のうちはザルをがりがりかいたり敷物をむしったりしてミューミュー鳴くが、暫くすると観念して静まってしまう。やがてこっちが食事がすん
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